しろいろのうそをつく
親愛なる白の女王へ
君の瞳は砂糖菓子の様に甘く愛くるしいというのに
君の唇は唐辛子の様に辛く憎たらしいようだ
けれど君のいちばん性質の悪いところといえば
棘は他より鋭い癖其れを許容出来る程の
美しさを持ち合わせているということ
不思議 不可思議 洋菓子 御菓子
君が気に入る総てを君の口に入るだけ放り込み
そのあと君が小さく開いた唇から
角砂糖ひとつ転がりおちること
今か今かと春を待つような心持ちで御待ちしています
帽子屋より愛をこめて
****
「あれだけ吐き気がする程に甘やかなラブレターを送ったと云うのに、
其の御返しと来たらこうだ。
"くたばれ詐欺師"。たった7文字。然も甘さの一欠片も無い。
俺はクッキーの一つやダルクの二枚でも送ってくれると期待して居たンだがね。
嗚呼残念だよ残念だ残念通り過ぎて茨の中で長年の眠りに付きそうだ俺は。」
「……チョコの一つや二つ付ければまた話が違って居たかと思われますけど。」
「馬鹿云え甘ければ御菓子で在る必要性何て無い筈だろうに。
少なくとも俺はそうだ。甘い言葉甘い顔甘い時間甘い罠にエトセトラ、
全部引っくるめての甘党なんだ。
だと云うのにこんなにも辛い物を咀嚼しろと彼女は俺に云う訳だ。
クッキーやダルクは最早如何でも好い。
せめて封筒だけを送り付けてくれれば好かった。
其れなら俺は此の薄っぺらい封筒の中に彼女の気持を夢視る事が出来たのに。
残念だ嗚呼残念だ残念通り過ぎてラプンツェルの髪で首をくくりたいね俺は。」
「………。」
「残念だ嗚呼残念だ残念だ。」
「本気で落ち込んでるんですね。」
甚振り尽くせりの大サービス
「確かに在るな。
日光を遮る為の帽子も、人目を忍ぶ為の帽子も、
自分を偽る為の帽子も、予定を貼る為の帽子も。
或いは其れしか無い。だって此処は帽子屋だから。」
「つー訳で、
ンな事も察しねェで"帽子在りますか"とか聞いてくる冷やかしは帰って下さァい。」
「接客態度が悪いってレベルじゃねーですよ髭。
メアリは一応客です。最早サクラです。商売する気在りますか。」
「無ェよ。少なくとも俺の芸術を理解しねェ奴相手にはな!」
「其れでは誰も買えなくなりますし此ではもともと誰も買いませんよ。
だって此何処に"帽子の要素"が或るのですか。
いや、帽子ですか此、帽子、在りますか?」
「う、るせェなァもう!
…くそ。致し方無ェ。売ってやるよ俺の"帽子"を!さッさと選んでとッとと帰れ!」
「物凄く気に障りますけれどメアリは堪え忍ぶ事にします。
では此を下さい。」
「へェ、まァ御前にしては視る目ェ或るんじゃねェの。」
「(一番マシなのを選んだだけなのですが。)」
「で。 温めますか。」
「は?」
「…俺に同じ事二度云わせンじゃねェ。温めるかッて聞いてンだよ。
―――おッと人肌で、とか胸糞悪ィ勘違いすンじゃねェぞ?
帽子に熱々の紅茶注いで温めるッて云う寒い日のみの出血大サービスだ。
浸水の心配は御無用。俺の帽子は耐水だからな。ンで。温めますか?」
「すいません矢張り要りませんそしてさようなら。」
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TW3 PC(c00974他)の呟き。角砂糖一個分でも不快感を感じた方は華麗にユーターン。
(IC等の作品は『エンドブレイカー!』用のイラストとしてPLが作成を依頼したもの。
使用権はPL、著作権は絵師、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有。) ⇒text log
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