Alice｜ecilA

Ⅰ
ちくたくちくたくちくたく。
彼の時計は全く非常に正確でしたが、彼にとって其れは煩わしい事でしかありませんでした。何故なら彼は彼女を連れ去る時の訪れを報されるのも、彼女を連れて来る時の訪れを待つのも大嫌いでしたからね。だから彼は其の時計を熱々の紅茶に沈めて壊してしまったのですけれど。


Ⅱ
ちく　　ちく　　ちく　　。
彼の贈り物は全く非常に季節外れでしたが、彼は何分彼女の誕生日を知らないので仕方無い事なのでした。いえ。そもそも招待状も持たずに彼の御茶会に出席した彼女は驚くべき事に一言も名乗ら無かったので彼は名前すら知らなかったのですが、其れでも彼は彼女に何かを贈らずには居られなかったのです。だから彼の贈り物は何時でも何でもない日が口実だったのですけれど。


Ⅲ
ち　　　ち　　　ち　　　。
彼の証言は全く非常に役立たずでしたが、彼の心証を害するには十分でした。彼と同族にあたる人達は皆総じて彼女に罪を被せようとしておりましたし彼も其れがスムーズ且つ円滑に進む様に用意されたチェス駒の一つとして其処に呼ばれた訳なのですから。だから彼は、


‐‐‐‐‐‐‐
ほんとはジャックの裁判の証人だけど。
女王主催のコンサートで歌ったものの御前の歌は全くもって時間の無駄だ何て理由で女王の首切り対象になった上に時間に迄嫌われて、ジャックの裁判の証人として呼ばれて証言するものの女王にあの時の歌手だと気付かれて逃げる様に立ち去る帽子屋の人間らしさが大好きです。後「此の帽子は脱げません。私の物じゃないので。（売り物）」と云う台詞とか。ずっと『10/6』は彼のナンデモナイ日ジャナイ日、誕生日だと思ってましたが帽子の値段だそう。